富川岳が8県40人に会って学んだ “これからの地域プロデュ―ス” ローカルプロデューサーがゆく3月学びの旅 報告会レポート 【後編】

 

 

5/19に東京・原宿で「ローカルプロデューサーがゆく3月学びの旅 報告会」が開かれました。主催者は2年前に東京から岩手県・遠野市の山奥に移住した、ローカルプロデューサーの富川岳さん。富川さんは、「今後地域をプロデュースしていく上で、ローカルプロデューサーに求められること」を知るべく、3/4~3/17に2週間で8県を巡る旅を敢行! 各地で活躍するプレイヤーを、なんと40人も一気呵成に訪ねてきたのだそうです。

 

 

レポート後半では、富川さんが会った40名の中から、「店」「街」「物」という3つのテーマに沿ってピックアップした3名から「何を学んできたのか」をまとめます。

 

 

語り手:富川岳(ガク)

ローカルプロデューサー

 1987年1月19日生まれ。新潟出身。新卒で東京の広告代理店に入社。WEBマーケティングや広告プロデュ―スを学んだのちに、2017年に岩手県遠野市へ移住。移住後「Next Commons Lab遠野」の立ち上げに携わったのち、ひとり広告代理店「富川屋」を創業。さらに、遠野物語などの遠野文化や歴史を新しい形に活用していくことを考える任意団体「to know」を立ち上げ、代表をつとめる。郷土芸能「しし踊り」の舞い手でもある。今回の聞き手・柳瀬武彦さんと共に「ゆらしにきました」というユニットを組み、定期的に、仲良くなりたい人を呼んでカレーを食べるイベント「ゆらしナイト」を開催している。

 

 

 

聞き手:柳瀬武彦(タケ)

プランナー・コピーライター

1986年3月27日生まれ。東京都練馬区出身。イベント制作会社、クリエイティブカンパニーを経て、2017年に独立。地域の魅力発信広報や社会課題解決型プロジェクト、企業のコミュニティデザインを中心に活動中。東京都に住みながら、自然豊かな埼玉県小川町へも週に1~2回通う1.5拠点生活を最近スタート。今回の報告会会場「Humans」のパートナーでもある。2012年に富川さんと出会い意気投合してから、ユニット「ゆらしにきました」を結成。

 

 

 

 

 

 

 ① <店> ー 福岡・八女「うなぎの寝床」白水高広さん

 

 

 

ガク:1人目は、福岡・八女に店舗を構える「うなぎの寝床」の代表・白水高広さん。今回の学びの旅で、絶対に会いたかったひとりです。

 

去年の暮れに、今後「to know」で、土地の文化や歴史をどういう風にプロダクトや企画、デザインに生かしていくのがいいのか? と考えていたときに、たまたまTwitterで存在を知ったんです。Twitterとnoteを読んで、活動が面白いのはもちろん、考え方がすごく近いと感じました。

 

 

タケとかに協力してもらって、東京でも一度お会いしたのですが、その時「ぜひお店にも行きたいです!」と伝えていて。今回やっと行けたっていう。

 

 

 

「うなぎの寝床」では、久留米絣(くるめがすり)の「もんぺ」などの、地域文化を生かしたプロダクトを店舗とWEBで販売しています。その中でも、特にもんぺの販売数は、なんと年間16,000本を超えるそうです。僕がローカル界隈で注目している人の中でも、知名度や実績的にトップランナーなんで、知っている人も多いと思います。

 

※白水さんのnoteから引用

 

※うなぎの寝床 facebookから引用 

 

 

 

 

 

ガク:今回、白水さんにお話を聞く中で共感したのが「文化に経済を」という言葉。白水さんいわく、「うなぎの寝床」は、“地域にどうやって経済をいれていくか”ということを考えながら活動している「地域文化商社」なんだそうです。

※白水さんのnoteから引用

 

 

 

 

 

その活動の根本にある考えは、土地の文化を反映したプロダクトを作っても、売れなければ、その土地の文化は残っていかないというもの。土地の文化を後世に伝えていくためには、その土地の文化を反映したプロダクトが売れつづける、“販売ルート”を確保することが重要なんだそうです。

 

 

 

 

ガク:この販売に関する話を深掘ると、お店をはじめる人って、大体の場合は、委託商品を販売するところから始めるんですよ。委託の方が買取よりもリスクが少なく、販売数の様子見ができますからね。

 

しかし、「うなぎの寝床」では、取引先への覚悟を見せるために、なんとはじめから商品を買取って、販売を始めたそうです。そのような覚悟を見せても、オープン直後は、地域の職人さんたちから全く相手にしてもらえなかったそうですが、その経験から「商品を実際に売らないことには、職人さんたちからの信頼は勝ち取れない」ことを知ったと言います。そこから、さらに努力を重ねて、着実に売上を伸ばしていき、徐々に信頼を掴み取っていったようです。

ちなみに今、地域でプロダクトを店舗販売している商品開発者は白水さんだけじゃないんです。新潟で10年以上活躍する人気ユニット「エフスタイル」さんも、デザイン兼店舗を構えて販売されていますし、福井県の鯖江で活躍する、白水さんの知り合いで地域プロデューサーのTSUGI・新山さんも、事務所の横に、自分が関わったプロダクトを販売するスペースを最近作られたのだとか。

 

これから地域で活躍するデザイナーやプロデューサーたちは「プロダクトのデザインをしたら、そこで終わり」じゃいけないということが、よく分かりました。

 

 

 

 

分類して、あえてすこしズラす戦略


 

 

ガク:白水さんとお話していて思うのは、図解による説明がすごく上手だということ! noteとかにも、「なんの学会の資料ですか?」みたいな図表がたくさん出てきます。

 

なんでそんなに分析や見せ方が上手いんですか? とお聞きしたら、「富川さん、分類ですよ」って言われました。

 

タケ:どういうことだろう?

 

ガク:まずは何事も、情報の整理が大事だということです。この情報は、どのカテゴリーに当てはまるのだろう? と、一つひとつ丁寧に分類していくんですね。

 

情報の分類が正しく出来ないと、物事を正確に理解できません。逆にできれば、分類したものを組み合わせたり、通常のカテゴリーから意識的にズラしたりするなどの応用が効くようになるのだそうです。

 

タケ:確かに僕が白水さんにお会いしたときも、「その商品をどう捉えるかが大事なんだ」とおっしゃっていました。

 

 

たとえば従来のもんぺ=農業の作業着だったため、もんぺは農家の人しか買わないものだったと。ところが、「うなぎの寝床」が、もんぺ=動きやすいパンツと捉え直したことで、もんぺは、農作業以外でも履ける、普段着のひとつになったんだそうです。

 

http://monpe.info から引用 

 


ガク:同じデザインの同じものでも、それをどう捉えるかで、販路の可能性は広がるという学びですね。……あのもんぺに限って言えば、作ってみたら思いのほかラインがタイトだったので、「やべっ」と慌てて「現代版」と枕詞をつけたら、街でも履かれるようになり、結果的にヒットしたという流れだそうですが(笑)。

ただ普段から、商品開発をする際には「分類後、分類をちょっとズラして捉え直す」ことを戦略的に行っているそうです。

 


 

※うなぎの寝床 WEBサイトから引用 

 

▲(右)最近、2店舗目も開店したという白水さん。以前に、厚生労働省の雇用創出事業「九州ちくご元気計画」の主任推進員として、2年半で約100件の商品開発に携わり、商品開発について徹底的に学んだそうです。その経験から、「プロダクトを作る=売る」というベースになる考え方が生まれたんですね。「うなぎの寝床」の店舗では、最初に開いた店舗が、福岡のものを生かしたプロダクトの販売をメインにしているのに対し、2店舗目では、全国から仕入れた各地域のものを生かしたプロダクトを並べているということです。福岡に行ったら、ぜひ立ち寄ってみたいお店です。

 

 

 

 

 

 


② <街> ー 兵庫・城崎「城崎国際アートセンター」の田口幹也さん

 

 ▲タケさんも同行した城崎旅。左から二番目が田口さん

 

 

ガク:兵庫県豊岡市城崎は、あの「城崎温泉」があるエリア。遠野に移住してから、各地域の情報がちょこちょこと耳に届くようになったんですが、その中でも「どうやら城崎が面白いらしい」とは、何度も聞いていたんです。

 

タケ:それは気になっちゃうよね。

 

ガク:それで今回城崎にも行ったんですが、現地でご紹介いただいた田口幹也さんが、城崎の“街づくり”に関わるキーマンのひとりだったんです。

 

 

 最近城崎では、アーティストに一定期間滞在してもらい、滞在しながら作品を制作してもらう取り組み「アーティスト・イン・レジデンス」が盛んなのですが、田口さんは、その取り組みの拠点「城崎国際アートセンター[1]」の館長をされています。

 

 

 

タケ:とにかくキャラが濃くて最高でしたね(笑)。一人称が「ワェ」なんです。雑誌「ソトコト」の編集長・指出一正さんや博報堂ケトルの嶋浩一郎さんと大学の同級生で、指出さんとは一緒に住んでいたらしいですよ。

 

ガク:大学卒業後もしばらくは、東京で働いていたそうですが、震災を機に豊岡市に戻ってきたそうです。2011年の頃ですね。

 

それで始めた活動が「おせっかい」。「おせっかい」と書いた名刺を作って、色んな店や場所、人に、自分からデザインのアドバイスをするなど、文字どおりお節介をしまくっていたそうです。

 

その活動が色んな人の目に留まって、田口さんを「城崎国際アートセンター」の館長にしよう! となったんだとか。

 

 

[1]「城崎国際アートセンターは、温泉街の中に位置する舞台芸術を中心とした滞在型の創造活動、いわゆるアーティスト・イン・レジデンスの拠点です。ホール、スタジオ、レジデンス(宿泊施設)で構成され、舞台芸術の発表の場としてだけでなく、アーティストが城崎のまちに暮らすように長期滞在できるアートの拠点」

http://kiac.jp/jp/aboutus.html    

 

 

 

 

 

 

プレイヤー × 先見性のある行政が叶える街づくり

 

  

 

ガク:田口さんの行動力はもちろんなんだけど、行政の柔軟さもすごいですよね。力がある人に、正式にポストを与えたことで、色んなアーティストを街に呼んでもらい、結果、アートを起点とした街づくりに成功しているんだから……素晴らしいなぁ。

 

 

タケ:だから今、城崎には面白いプレイヤーがたくさんいるんですね。そのプレイヤーたちの、かみ合わせがまた面白い。

 

ガク:そう! でもそのかみ合わせが起きるのも、もともと城崎に根付いていた「共存共栄」の精神があるからなんだそうです。大きな観光地なら、団体向けのホテルがいっぱい立って、プロモーションも団体さん向けのものになるらしいんですが、城崎は狭い場所に、個人客向けの旅館がひしめいています。

 

だから、ひとつの旅館が単独で突飛なプロモーションをするとかではなく、「城崎温泉を、どう生かしていこうか?」と皆で考える土壌が元々あるのだとか。

 

 

タケ:会う人みんなが「共存共栄」の精神について話していたもんね。

 

ガク:今はちょうど城崎の名だたる旅館が、どこも代替わりをするタイミングなのだとか。それで若旦那衆たちが協力して、新しい取り組みをしていこう! と頑張っているので、街づくりの動きも特に活性化しているようです。その若旦那衆たちとも、田口さんは繋がっているんですよね。

 

たとえば、城崎が志賀直哉来湯100周年を迎えた年に、若旦那さんたちで「せっかくだからなんかしたいよね」という話になって、田口さんに、なにかいい案がないか相談したそうなんです。そこで田口さんが、あるブックディレクターさんをご紹介したところ、あの「本と温泉」という取り組みが実現したということで……。

 

タケ:まさか「本と温泉」を仕掛けた側の人に会えるとは思ってなかったよね。

 

※「本と温泉」プロジェクト※

志賀直哉の短編「城の崎にて」で有名な城崎温泉で、地元の若旦那たちがNPO法人「本と温泉」を立ち上げ、湊かなえさんや万城目学さんなどの人気作家の新作を、地域限定で発売したという珍しい試み。

 

 

  

ガク:城崎でしか買えない本を作ることで、城崎に人を呼んだ。これもアーティスト・イン・レジデンスの好例のひとつですよね。

 

 

 

ガク:さらに城崎は、行政に先見性があるんですよ。市役所にお邪魔したときも、行政マンのみなさんのパソコンがMACでしたからね。衝撃を受けました……。    

  

タケ:(笑)

 

ガク:僕らがお伺いした日がたまたま、新しい取り組み「ミュージシャン・イン・レジデンス」の第一弾を発表した日だったんですが、第一弾で呼んだミュージシャンはなんと「Bonobo(ボノボ)」。しばらく豊岡に滞在してもらって、滞在しながら豊岡市からインスピレーションを受けた曲を制作、発表していただくそうです。

 

タケ:そういう取り組みを行政主導でやってるっていうのは、本当にすごいよね。

 

ガク:そもそも最初に「アーティスト・イン・レジデンスの取り組みを!」って号令をかけたのは、市長だったそうですしね。

 

アートで街づくりをしていくということを、市長が理解して好意的に進めている環境は、正直羨ましい! 遠野も城崎を真似したい……!

 

タケ:なんて正直(笑)。

 

 

ガク:そこでどうしたら遠野も城崎みたいになれるかな? って考えたんですが。

 

遠野には、行政も含めて「ビールをプッシュした街づくりをしたい!」という想いがあります。実際に取り組みも始まっていて、遠野にきた移住者たちがビールを作りはじめている状況です。その動きは、遠野のホップを守ることになるため、企業としてメリットがあるキリンビールが、行政の取り組みに投資をしてくれているのですが……この状況は、共存共栄に近いなぁと。

 

もちろん、今後遠野が城崎みたいな勢いを生むためには、地域の街づくりに興味がまだない人をうまく巻き込むことや、さらなる行政の後押しなど……色んなことが、たくさんたくさん必要なんですが。

 

それでも、城崎を訪ねたことで、今後掘り起こしていける要素が、まだまだ遠野にはいっぱい眠っているということに気づけました。

 

タケ:城崎が、「俺には関係ない」「このままでいい」と言っていた層も巻き込んで、地域とうまく接続できてるのは、田口さんの人柄が大きいんでしょうね。

 

 

タケ:田口さんって、僕らが訪ねて行ったときも、色んなところを案内してくれて。一緒にいたら楽しそうなことが起こりそうなキャラなんです(笑)。田口さんという存在が、外からやって来た人を受け入れる玄関口として最大級に機能しているんだろうなと感じました。

 

ガク:巻き込み力がハンパないんですよね。田口さんの住む家の一階は空っぽになっていて、田口さんはそこを「ショッパーズ・イン・レジデンス」として使ってるんですが。

  

特に賃料とかは取らずに、知り合いを呼んで、滞在期間中、商品並べてお店屋さんをやってもらう……それでピエールエルメとか来るわけですよ(笑)。それに街の人たちが喜んで、家下に大行列ができるとか……すごいよなあ〜。

 

※写真:中川正子「温泉のあるまちで暮らすひと」『TURNS』https://turns.jp/18388 から引用

 

▲田口さんの奥さんは漫画家さんで、田口さんいわく「奥さんに刺激を与えるのが僕の仕事」。田口さんのインスタグラムに乗ってるのは大体「お寿司」か「温泉」らしく、ガクさんもタケさんも「最高ですよね、ほんと……!」と悶絶(笑)。城崎には外湯がたくさんあるそうで、田口さんは城崎に移住してから5年ほど、家でお風呂に入っていないのだとか! 毎日お気に入りの外湯に浸かる暮らし……羨ましすぎです……!

 

 

 




③ <物> ー 神戸・垂水のデザイン事務所「TRUNK DESIGN」堀内康広さん

 

 

 

 

26歳で独立 

 

ガク:3人目は、デザイン事務所「TRUNK DESIGN」の代表兼デザイナーの堀内康広さん。37歳です。堀内さんは、26歳で独立してすぐに、路面店のデザイン事務所兼ショップをオープンし、2016年1月にカフェもオープン。さらに、自分たちが作ったプロダクトを販売する店舗を、最近オープンされたそうです。

 

 路面店のデザイン事務所兼ショップ ※TRUNK DESIGN facebookページから引用 

 

 

 

遠野のモノを使った「商品開発」をする際のヒントをもらえればと、会いに行ったんですが、今回の学びの旅で一番リアルな話が聞けたように思います。

 

タケ:と、いうと?

 

ガク:「うなぎの寝床」の白水さんの話と重複する部分があるんですが、今回の旅のメインの学びって「デザイナーのメーカー化」だったんです。堀内さんは、それを体現したような人でした。

 

 

実際に堀内さんが開発された商品を、いくつか紹介しますね。堀内さんは28歳から商品開発をはじめて、30歳で、地元兵庫に根付く産地プロジェクト「Hyogo craft」を開始したそうなのですが、そのプロジェクトで生まれたプロダクトのひとつに「hibi」というマッチがあります。

 

hibi WEBサイトから引用  

 

 

このhibiマッチに火をつけると、なんとつけている間中、アロマのように、部屋に香りが広がるんです。しかも、長時間火が消えずに、じわぁっと灯り続けるという。マッチに、淡路島のお香の会社の技術を組み合わせることで、できたプロダクトだそうです。    

※富川の事務所でもhibiを愛用中

 

 

 

「マッチを擦って火を付ける」という文化を残すために生まれたプロダクトなんですが、火をつける行為と香りが広がる組み合わせが絶妙だなぁと。 開発に3年半かかったそうですが、現在、東京・代官山の蔦屋書店など、国内の約150店舗以上で販売されているそうです。

 

タケ:海外でも20カ国以上で販売されていて、国内と海外での売り上げが同じくらいと聞きました。

 

ガク:あと面白いなあと思ったのが、森林の事業所と木の食器を作った「森の器プロジェクト」。作られた食器の底を見ると、その木が生えていた場所の経度と緯度がナンバリングされていて、どこで育った木なのかを知ることができるんです。

 

森の器プロジェクト WEBサイトから引用  

 

 

 

ガク:堀内さんは、そんな風に産地のものを生かしたり、産地について関心をもってもらえるように伝える工夫をしたりしながら、面白いプロダクトを作っている人なんです。

 

 

タケ:そういうユニークな商品開発を始めたのには、何かきっかけが?

 

ガク:「デザインを納品して終わり」という従来のデザイナーの役割に、モヤモヤを感じていたんだそうです。それで、デザインしたその先にもかかわるために、独立後3年目くらいから、色々なところに声を掛け始めたと聞きました。

 

 

 

 

 

 

「デザイナーは納品して終わり」問題の終わり

 

ガク:「納品して終わり」問題に関しては、僕もジレンマを感じていたので、堀内さんの話にはすごく共感しました。

 

 

あと今回の旅に出る前に抱えていた課題のひとつ「受注業務から、どう脱するか?」のヒントにも出会えたなと。堀内さん自身が主導権を持ったプロダクトづくりをされている姿を見て、やっぱりそうやっていくべきだよなあ……と。クライアント任せにするのではなく、自分の能動的な意思を持たなきゃいけないよなと思いました。

 

タケ:いくつかのプロジェクトをご一緒させていただいて思ったのは、堀内さんには、やりたいことがあるんだよね。だから、事業者さんのやりたいことを叶えますよ! というよりも、「お互いのやりたいが重なる部分を一緒にやりましょう! 僕もコミットするんで、そちらもコミットしてくださいね」という感じ。だから、来た仕事すべてではなく、堀内さんが吟味して「これは可能性にあふれている」と判断したものだけを受けて、販売にまでかかわっているような印象を受けます。

 

ガク:堀内さんのすごいところは、行動力だよね。例えば、「台湾で仕事できるようになりたいな」と思ったら、仕事がなくても、隔月で台湾に行くと決めて実行していただとか。

 

それで、実際に通い続ける中で出来た繋がりで、仕事が生まれ出したっていうんだからね。

 

タケ:とにかく動くことで仕事を作ると。

 

ガク:それって、地域で活動する上で本当に大切なこと。何度も通って会う中で、親近感や関係性が生まれていって、それではじめて仕事が生まれるのが、地域だから。

 

 

堀内さんに会ったことで、僕が感じたのは「ローカルプロデューサーは、ローカルにずっといてはいけない説」です。

 

拠点やアウトプットの場としては居続けるんだけど、そこにじっとしているんじゃなくて、色んな場所に行って、色んな人に会うことが大切だなと。今回、色んな人に会う旅をして、もっと定期的にこういう機会を作らなきゃいけないと痛感しました。

 

 

タケ:堀内さんは、地場産業のプロデュースをしたいという人向けの塾で、講師もされているよね。

 

Japan brand produce school WEBサイトから引用 

 

 

ガク:そうそう。地域の資源や職人を海外にプロデュースしていく、プロデューサーを育てるための塾「ジャパンブランドプロデューススクール」の講師ですね。12ヶ月のプログラムで、次の7月から3期目の募集をはじめるそうです。

 

 

デザインや商品プロデュースはできても、販路を確立する方法を教えてくれる人って、地方にはなかなかいませんからね。そこまで出来る人が地域に増えればいいなと、今回の旅で心から思いました。

 

タケ:堀内さんって、最初にお金をもらうやり方だけじゃなくて、そのプロダクトが売れたあとの利益を分配するやり方を取ることもあるそうです。

 

何故なら、先にお金をもらってたのに売れなかったら、申し訳ないという気持ちが残るし、それでなくなってしまう付き合いもあるからだと。それに対して、販売額から一定の割合でもらうやり方だと、売れれば売れるほど収入額が増えるため、自分も相手も嬉しいし、産地や作り手との関係が、納品して終わりではなく、一生付き合う関係性にもなるんだというんですね。

 

そのやり方ができるのは、堀内さんが本当の意味で「納品のその先までかかわっている」人だからだろうね。

 

※TRUNK DESIGN WEBサイトから引用 

 

▲タケさんいわく、堀内さんは仕事以上の関係になってから仕事をする人なのだそうです。たくさん交流して考え方や価値観をシェアし合ってから一緒に仕事をするから、良いプロダクトになっているという流れがあるのだとか。グローバル展開まで叶えているのも「技術とノリが両立している堀内さんならでは」とのこと。

 

 

 

 

 

 

<滋賀県・長浜市からのスペシャルゲスト「仕立屋と職人」の石井挙之さんの取り組み>

 

 

報告会後半にはスペシャルゲストとして、ガクさんともタケさんとも交流のある石井挙之さんが登場! 今は滋賀県・長浜市の宿場町に地域おこし協力隊のひとりとして移住し、長浜のシルク生地を織る機屋さんや福島県郡山市のだるま職人と深く関わりながら、職人の生き様を仕立てるプロジェクト「仕立屋と職人」を進めているそうです。

 

※仕立屋と職人 facebookページから引用  

 

活動はぜひ以下のURLを! 

 

和紙ジュエリー harico 大黒屋と仕立屋がダルマを新時代へ!

https://readyfor.jp/projects/harico/announcements/102372

 

 

 

プロジェクト開始3日で目標額を達成したプロジェクト。ものすごく面白い取り組みなので、地域活動に興味がある人、特に職人に興味がある人は、要チェックです!

 

石井さんいわく、

「地方で職人さんの心を開くのも、企業にデザインの価値を伝えるのも、ものすごく大変だけれど、こっちも本気でぶつかったり、デザインにどのようなプロセスがあるのかを丁寧に細かく見せることで、分かってもらえるし、そうやって、固定概念の塊だった人の心が動いた瞬間を見ることが、何よりもうれしい!」とのことでした。 

 

長浜には、かっこいい暖簾のかかった、「仕立屋と職人」の事務所兼住居があるので、ぜひ訪ねてみてください。石井さんは、エネルギーが毛穴の一つひとつから溢れ出しているようなエネルギッシュな人なので、会うと自然に「自分も、やれることを一所懸命にやらなきゃ!」という気になりますよ~!

 

▲石井さんは会場に長浜名物「サラダパン」を大量に差し入れ。細かく刻んだたくわんとマヨネーズが合わされた具が入っていて、やさしくも独特な味わいがクセになります。

 

 

 

 

 

 

<おわりに> 

 

 

以上、報告会のイベントレポートでした! ガクさんが「得てきた情報量の多さに、アウトプットして整理しないとパンクしそう」と話されただけあって、ものすごい情報量の会となりました。報告会のパワーポイント、なんと合わせて115ページ(笑)! 

 

 

正直、ここに書ききれないアウトプットの数々があったのですが、この先が気になる方は、ぜひガクさんとタケさんに直接会いに行って、聞いてみてください。

 

▲イベントで配られた「ゆらしにきました」ステッカー

 

 

 

「ローカルプロデューサーや地域で活躍するデザイナーが、これから一番必要とされるのは『売ること』。生計を立てる意味でも、地域の人たちにデザインの必要性や価値を分かってもらう意味でもです。

 

そのために販売店舗を積極的に作るなど、地域プロデューサーやデザイナー自身がプロダクトの販売ルートを確保する流れが全国で生まれていることを、今回の旅で知ることができました。では遠野で地域資源を生かしたプロダクトを作って、それを店舗販売することで、実際ぼくは食べていけるのか? その答えは、これから探っていきます。地域で活躍する人材が稼げるようになれば、地域で活動したい!と思う人たちが増えて、地域はもっともっと面白くなると思うので。そのロールモデルのひとりになれるよう、頑張ります。

 

試みのひとつとして、企画やデザインによって人が集まることや経済が生まれることを証明するようなイベントも、今後遠野で開催できたらいいですね」(ガクさん)

 

 

 

これからも継続的にガクさんは学びの旅に出るとのこと! 第2弾は四国を攻めるのだそうです。

 

「ぜひ一緒に行きましょう!(ガクさん&タケさん)」

 

 

続報を待つとしましょう!